『田園の詩』NO.72 「野菜作り10年」 (1997.9.23)


 お盆の頃から晴天が続き、野菜の種まき時期の9月になっても畑は鍬も入らぬくらいに
カチカチでした。気をもんでいたのですが、恵みの雨を得て、夏野菜の終了した畑を耕し
て、冬野菜の種をようやくまき終えることができました。

 野菜作りの基本は「連作をしないこと」です。ですから、畳でいえば3枚から6枚くらい
の広さに畑を区分けして、種をまいたり苗を植えたりしているのですが、この基本を忠実
に守り、数年間のサイクルになるように場所を変えております。

 ところで、狭い畑なら区分けをして連作をしないように気配りしながら各種の野菜を作付
けできますが、広い減反の田圃となるとそう簡単にはいきません。

 そこで、当地では、どこの農家でも一面に大豆をまいています。5年前、人に貸していた
一反足らずの田圃が返されてきた時、お米を作ることはできないので、私も大豆をまきま
した。

 その年、大豆は大豊作でした。私はまだ若い内に≪枝豆≫として、友達に配りまくりまし
た。大好評で、「まだ、田圃にいくらでもあるヨ」といったら、何度か≪枝豆狩り≫にやって
来た程です。

 そうしてほとんど取り尽くし、残ったものを実らせ次年度の種として収穫しました。同じこ
とを繰り返してきたのですが、昨年は連作障害で不作でした。

 そこで今年は、場所は変えられないので、種を自家製のではなく、新しく購入してまいて
みました。首尾は上々のようです。


       
      減反の田圃も、維持ができなくなれば、最後には杉やヒノキが植えられます。
       先祖が山を切り開いて作った田圃が、我々の時代に元に戻ろうとしています。
       以前は通学路だったこの道も、数年後には、杉林に覆われた暗い道路になる
       でしょう。        (09.3.30写)



 まったくの素人が始めた野菜作りも、もう10年の経験を積みました。筆作りでも10年経
てば一人前です。しかし、何事も奥は深いもの。決められた技法・工夫を凝らしても、いつも
うまくいくとは限りません。ことに農業は自然が相手、収穫を前に台風の大被害を受けること
もあるのです。

 もうすぐ当地・国東にやってくる台風19号の暴風雨を窓越しに見ながら、我が家の大豆
だけでなく、実り始めたお米の被害が少なからんことを願うのみです。
                                (住職・筆工)

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